
永住者・非永住者の課税
Yoshio YamaguchiShare
日本に滞在して5年未満である外国人の方について、その多くが当てはまるであろう、「非永住者」の課税について解説をいたします。日本人のような「永住者」と非永住者では、日本で課税される範囲が異なってきます。
非永住者とは
日本の所得税の課税対象となる個人は、居住者と非居住者に分かれます。
居住者とは、日本に住所を有しているか、又は日本に1年以上滞在している個人を言います(所得税法2条1項3号)。居住者非居住者の区分では日本人か外国人かという国籍は関係ありません。
非居住者とは、居住者以外の個人です。
居住者は、さらに永住者と非永住者に分かれます。
非永住者とは、日本の居住者ではありますが、日本の国籍を有しておらず、且つ、過去10年以内において国内に住所等を有していた期間の合計が5年以下である個人を言います(所得税法2条1項4号)。永住者か非永住者かという区分では日本人か外国人かという国籍が関係してきます。
区分 |
定義 |
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居住者 |
永住者 |
非永住者以外の居住者 |
非永住者 |
居住者のうち、日本に国籍を有しておらず、かつ、直近の過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以内である個人 |
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非居住者 |
居住者以外の個人 |
課税の範囲
非居住者、居住者(永住者)、居住者(非永住者)の違いから、日本の税金が課される所得の範囲が異なってきます。
個人が居住者(永住者)に該当する場合、国内源泉所得か国外源泉所得かに関わらず、全世界で獲得した所得に対して日本にて課税をされます(所得税法7条1項1号)。
国内源泉所得とは、国内での活動や資産によって発生する所得を言い、例えば、国内の事業所を通じて行う事業活動による所得、国内にある不動産の賃貸や譲渡による所得、国内にて勤務したことにより生じた給与所得、内国法人から受ける配当所得などです(同法161条)。
国外源泉所得とは、国外での活動や資産によって生じる所得を言います。例えば、国外にて勤務したことにより生じた給与所得(同法95条4項10号イ)、外国法人から受けた配当所得(同7号イ)などは、国外源泉所得とされます。
個人が居住者(非永住者)に該当する場合の課税の範囲は次です。
1.国外源泉所得以外の所得(≒国内源泉所得)*1
2.国外源泉所得で国内において支払われ、又は国外から日本に送金されたもの。
区分 |
国外源泉所得以外の所得 (≒国内源泉所得) |
国外源泉所得 |
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国内払い |
国外払い |
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居住者 |
永住者 |
課税 |
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非永住者 |
課税 |
送金課税 |
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非課税 |
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非居住者 |
課税 |
非課税 |
*1 国内源泉所得(所得税法161条)と国外源泉所得(所得税法95条4項)以外の所得はイコールではありませんが、便宜上≒としています。
送金課税のルール
国内への通貨持ち込み、貴金属・債券等の国内への持ち込み、送付、国内で外国銀行のクレジットカードを使用し外国の銀行で資金決済がなされるものも、送金課税の送金に該当します。
所得があった国からの送金ではなく、他の国からの送金でも課税されます(「外国人の税務と手続き」阿部行輝著)。
国外からの送金を返金した場合、例えば、一度海外の口座から日本国内口座に送金をしたがすぐに海外口座に返金した場合は、あくまで最初に送金した金額が国内に送金された金額とみなされます。裁決事例集No76 H20.8.4。
給与に対する課税
給与所得の場合、何をもって国内源泉所得と国外源泉所得を区分するのでしょうか。それは、勤務者が物理的に日本国内にて勤務をすることで得た給与が国内源泉所得であり、国外の地で勤務することで得た給与は国外源泉所得となります。
例えば、アメリカにある企業の従業員として、日本にある自宅にて勤務をしており、給与が米国の銀行口座に振り込まれる場合、日本国内で勤務をしているためその給与は国内源泉所得です。どこの国の企業のために働いているか、どこの国で給与が支払われるのかは関係ありません。
ただし、日本法人の役員の場合は例外であり、国外にて勤務をして得た給与であっても、国内源泉所得として扱います(所得税161条1項12号イカッコ書き)。
勤務が国内と国外の両方で行われた場合には、国内源泉所得の金額は次の計算式で算定します。
国内源泉所得となる給与=給与総額×(365-休暇のための帰国日数−海外出張日数)÷(365-休暇のための帰国日数)
例えば、給与収入が45,000,000円、休暇のための帰国日数が17日、海外出張が8日の時、
国内収入= 45,000,000×(365-17-8)÷(365-17)
=43,965,517 ・・・A
国外収入=45,000,000-(A)=1,034,483・・・B
外国税額控除の計算で必要な「調整国外所得は」給与所得後の給与所得を按分します。
給与所得控除後の給与所得 45,000,000-1,950,000=43,050,000
国外源泉所得= 43,050,000×B÷45,000,000=989,655
(「外国人の税務」阿部行輝監修、渕香織著)
最後に
非永住者の人が国外源泉所得を有する時、日本に送金をした限度において日本にて課税されます。よって、日本に送金をしない方がタックスメリットがあります。海外銀行の口座にて決済をするクレジットカードを日本で利用したり、海外口座の資金を日本のATMにて引き出すことも、国内送金に該当する点は留意が必要です。