会社に対して課される日本の税金-法人税等、税率と計算例

会社に対して課される日本の税金-法人税等、税率と計算例

成岡拓哉

日本の法人の税負担

日本の企業が負担すべき租税には、法人税等、消費税、固定資産税、事業所税、自動車税などがありますが、金額的に重要なものは法人税等と消費税です。

本記事では、法人税等について詳しく見ていきます。

損益計算書においては、税引前利益の次に「法人税等」又は「法人税、住民税及び事業税」という名称で表示されます。

税率等の情報は2024/9/30時点の法令に基づいています。

法人税等の内訳は下記になります。

Tax type

National/Local

Tax basis

Tax rate

Corporate tax

National Tax

Adjusted net profit 

15%, 23.2%

Local corporate tax

National Tax

Corporate tax

10.3%

Prefectural tax/ Inhabitant tax

Local tax

Corporate tax 

1%-2%

Prefectural tax/ Per capita rate

Local tax



Prefectural tax/ Enterprise tax

Local tax

Adjusted net profit

3.5%-7%(所得割)

Prefectural tax/ Special Enterprise tax

Local tax

Enterprise tax

37%

Municipal tax/ Inhabitant tax

Local tax

Corporate tax

6%-8.4%

Municipal tax/ Per capita rate

Local tax





法人税等の内訳は下記になります。

税目

国税/地方税

課税標準

税率

法人税

国税

課税所得(*)

15%, 23.2%

地方法人税

国税

法人税

10.3%

都道府県民税/法人税割

地方税

法人税

1%-2%

都道府県民税/均等割り

地方税



都道府県民税/法人事業税

地方税

課税所得(*)

3.5%-7%(所得割)

都道府県民税/特別法人事業税

地方税

法人事業税

37%

市町村民税/法人税割

地方税

法人税

6%-8.4%

市町村民税/均等割り

地方税



(*) 課税所得とは、純損益に対して一定の税務調整を加えた金額です。

出典:国税庁 No.5759 法人税の税率 2024年9月30日時点

出典:総務省 

法人税

法人税の課税標準は課税所得です。課税所得とは、純損益に対して一定の税務調整を加えた金額です。

大法人の法人税率は23.2%であるのに対し、中小法人は、課税所得が800万円以下の部分に対しては15%(*1)、800万円超の部分に対しては23.2%です。


中小法人の法人税率

800万円以下の部分

15%

800万円超の部分

23.2%


ここでの中小法人とは、事業年度終了時点において資本金の額が1億円以下であるものを言います。但し、資本金5億円以上の法人との間に完全支配関係がある法人を除きます。

(*1) 3年間の所得金額の平均額が15億円を超える場合には、15%ではなく19%が適用されます。

例えば所得が2000万円だった場合、

<資本金が1億円を超える法人>

3,000万円×23.2%=696万円

<資本金が1億円以下の法人>

  • 法人税額(所得800万円以下の部分):800万円×15%=120万円
  • 法人税額(所得800万円超の部分):(3,000万円-800万円)× 23.2%=510.4万円
  • 法人税額合計:120万円+510.4万円=630.4万円

両者の差は65.6万円になります。さらにこれをもとに住民税が計算されるため、両者の差はこれ以上になります。

都道府県民税

会社は都道府県から法人住民税を課されます。これを管轄しているのは各都道府県にある県税事務所、都税事務所等であり、税務署とは異なります。

法人住民税は、さらに4つに分かれます。

法人税割、均等割、法人事業税、特別法人事業税です。

法人税割

課税標準は国税である法人税額であり、これに1%の税率を乗じた額が法人税割の税額になります。

仮に複数の都道府県に事務所を有する場合には、従業者数で法人税割金額を分割して、各都道府県へ納付することになります。法人税割の総額は変わりません。

均等割り

均等割りは、他の税金とは異なり、所得金額の大小に関係なく、黒字の法人も赤字の法人も等しく支払わなくてはならないものです。都道府県が課す均等割りは資本金等の額によって下記の通り決定されます。

均等割りの金額(都道府県民税)

資本金等の額

均等割(都道府県民税)

1千万円以下

20,000

1千万円超1億円以下

50,000

1億円超10億円以下

130,000

10億円超50億円以下

540,000

50億円超

800,000

出典:総務省

仮に複数の県や市町村に事務所を有する場合には、それぞれの県、市町村に対して均等割りを納付することになります。

法人事業税 

法人事業税は、その事務所等が所在する都道府県が課税します。

法人事業税はさらに所得割、付加価値割、資本金割に分解されますが、資本金1億円超の大会社とそれ以外の中小法人で税金種類が異なります。

中小法人は所得割のみが課され、大法人はさらに付加価値割、資本金割が課されます。

下記は、中小法人の所得割の税率です。

所得割の税率は、課税所得金額の大小によって、下記のように税率が異なります。


所得割の税率

課税所得の金額

税率

400万円以下の部分

3.5% 

400万円超800万円以下の部分

5.3% 

800万円超の部分

7% 


上記の税率は標準税率と呼ばれますが、各都道府県は、標準税率の1.2倍を超えない税率を適用することができます。詳細は各都道府県のHPをご覧ください。

仮に複数の都道府県に事務所を有する場合には、一定の基準で事業税を分割して、各都道府県へ納付することになります。

特別法人事業税

法人事業税に対して、更に37%を乗じた金額が特別法人事業税として課されます。

市町村民税

会社は市町村から法人住民税を課されます。これには法人割と均等割があります。

法人税割

法人税割りの課税標準は国税である法人税額であり、これ6%の税率を乗じた額が法人税割の税額になります。

仮に複数の市町村に事務所を有する場合には、従業者数で法人税割金額を分割して、各市町村へ納付することになります。全体の法人税割の金額は変わりません。

均等割り

均等割りは、他の税金とは異なり、所得の大小に関係なく、黒字の法人も赤字の法人も等しく支払わなくてはならないものです。市町村が課す均等割りは資本金等の額及び従業者数によって下記のように決定されます。

均等割りの金額(市町村民税)

資本金等の額

均等割り(市町村民税)

従業員50人超

従業員50人以下

1千万円以下

120,000

50,000

1千万円超1億円以下

150,000

130,000

1億円超10億円以下

400,000

160,000

10億円超50億円以下

1,750,000

410,000

50億円超

3,000,000

410,000


仮に複数の県や市町村に事務所を有する場合には、それぞれの県、市町村に対して均等割りを納付することになります。

計算例

下記の会社の法人税等の計算例を下記に示します。

  • 資本金の金額:10,000,000円
  • 課税所得(税引前損益に一定の税務調整を加えた金額):100,000,000円
  • 従業員数:55人
  • 所在地:東京都町田市
  • 中小法人に該当

計算の結果、課税所得1億円に対して法人税等の額は36,683,220円、表面税率は36.68%になります。事業税については他の税目と異なり、事業税自体が実際の納付した年度において損金になり法人税の課税所得を押し下げる効果があります。これによって、実効税率は33%ほどになります。

計算例

税目

課税標準

算式

税額

法人税

100,000,000

8,000,000*15%

(100,000,000-8,000,000)*23.2%


22,544,000

地方法人税

22,544,000

22,544,000*10.3%

2,322,000

(県民税)法人税割

22,544,000

22,544,000*2%

450,880

(県民税)均等割り



20,000

(県民税)法人事業税

10,000,000

4,000,000*3.75%

4,000,000*5.665%

92,000,000*7.48%

7,258,200

(県民税)特別法人事業税

7,258,200

7,258,200*37%

2,685,500

(市税)法人税割

22,544,000

22,544,000*6%

1,352,640

(市税)均等割り



50,000

合計



36,683,200

税額は百円未満は四捨五入

申告期限

税務署に対して法人税及び地方法人税の確定申告書、都道府県税事務所に対して都道府県民税・事業税・特別法人事業税の確定申告書、市町村役所に対して市町村民税の確定申告書を提出します。

申告期限及び納付期限は、原則として事業年度終了の日から2ヶ月後です。但し、定款などで事業年度終了の日の翌日から2か月以内に定時総会が招集されない常況にあると認められる場合には、確定申告の期限を1か月間延長したい旨の申請書を提出することで、申告期限と納付期限が1か月延長されます。

申告期限の延長の適用を受けると、期末から3か月以内に確定申告と納付をすれば無申告加算税と延滞税が課されません。期末から2か月を超えた延長期間について、利子税(法人の損金となります)が課されるのみとなります。

期限後に申告をした場合のペナルティ

申告期限を過ぎてから確定申告書を提出すると、無申告加算税が課されます。無申告加算税の金額は、納付すべき税額に一定の税率を乗じた金額です。早め早めに対応をすれば低い税率ですみ、税務署からの指摘を待っている場合には重い税率になる点、注意を要します。

  • 法廷申告期限から1か月以内に申告: 0%
  • 税務署から税務調査の通知を受けるまでに申告: 5%
  • 税務調査の通知から税務調査までに申告: 10%, 15%,25%
  • 税務調査が始まった後に申告: 15%, 20%, 30%

繰越欠損金

欠損金とは、課税所得を算定した結果、所得が赤字である場合の金額のことです。

法人税法上、欠損金を将来に繰越し、将来発生した所得と相殺することで将来の課税所得を減額することができます。

欠損金を将来に繰越すためには青色申告承認申請書を税務署へ提出している必要があります。

欠損金を繰り越すことができる期間は10年であり、それを超える場合には消滅します。

資本金1億円以下の中小企業等には全額の繰り越しが認められていますが、大企業には50%の上限が設けられています。

なお、所得が赤字の場合であっても、都道府県民税及び市町村民税の均等割りだけは納付する必要があります。

まとめ

損益計算書に記載される「法人税等」又は「法人税、住民税及び事業税」の内容について見ていきましたが、その内訳は法人税、地方法人税、都道府県民税(地方税)、市町村民税(地方税)に別れ、地方税はさらに細分化されます。それぞれの税目の課税標準は何か、税率は何か、という二つを押さえることがポイントになります。

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